小児近視進行抑制
小児近視進行抑制
現在、子どもたちの近視が増えており、世界的な問題となっています。いったん近視になると、コンタクトや眼鏡などを常時装用する必要が出てきます。また、近視はたとえ軽度でも、緑内障、網膜剥離、網脈絡膜萎縮など視力が著しく低下したり、失明する危険もある目の病気にかかるリスクが上がることが疫学調査で明らかになっています。このため、子どもたちの見え方を、生涯にわたって良好に保つために、子ども時代に近視を発症させないようにしたり、強い近視に進行させない取り組みが、非常に重要であると考えられます。
近視には、遺伝と環境の両方が関与すると考えられています。遺伝要因とは、先祖や両親から受け継いだ遺伝子によって生じるものです。環境要因としては、屋外活動の減少や、近いところを見る作業の増加などがあります。今の子ども世代は、親世代に比べ、明らかに近視が増加し、若年化しています。このような急激な変化は遺伝だけでは説明できず、環境が大きく関与する重大な証拠です。
近いところを見る作業以外に、世界共通で認識・信頼されている近視の原因には、「外遊び」の減少があります。日光にあたる外遊びが少ない子どもは近視になりやすいことが報告されています。近視の予防には日光にあたり、外で遊ばせることが最も近道かつ確実な方法とされています。近視がある子もない子も、1日2時間は外にいることが有効とされています。
近いところを見る作業は、たくさんありますが、この作業が増えることで近視になる確率が高まるとされています。これまでの研究から、読書や書き物をするときは、少なくとも30cm以上離して作業すること、30分に一度は遠くを見て連続させないことが、近視予防に効果があることが証明されています。読書や書き物をするときは、十分な明るさを保つようにも気をつけましょう。また従来からの読み書き以外に、近くを見る作業として、手元で使用するスマホや携帯ゲーム機器なども有害な点が指摘されつつあります。
現在、医学的に近視抑制に効果があると報告されている治療法として、低濃度アトロピン点眼、累進焦点コンタクトレンズ、オルソケラトロジー(ナイトコンタクトレンズ)などがあります。マイオピン(低濃度アトロピン点眼薬)は、小児期の近視の進行を軽減させることを目的にシンガポール国立眼科センターで開発された点眼薬で、日本でも既に商標登録されている治療薬です。1日1滴、就寝前に点眼するだけで、副作用もほとんどなく、近視の進行を平均50〜60%抑えることができるとされており、大変導入しやすい近視進行抑制治療と考えられます。
※マイオピン処方は自費診療のため保険適応外となります。